院長ブログ

皮膚手術の基礎 <粉瘤切除、アテローム除去、脂肪のかたまり>

形成外科・皮膚外科で一番はじめにトレーニングする手術が粉瘤の切除術です。

前胸部の粉瘤
前胸部の粉瘤

粉瘤(ふんりゅう)とはアテローム、アテローマ、脂肪のかたまりなどとも呼ばれている、皮膚に出来る腫瘍(できもの)の一つです。

毛穴などから表皮の袋が出来て、袋の中に皮膚の角質や垢などが溜まってしまう病気です。

皮膚に出来る腫瘍では非常に多く認められる病気で、全身の皮膚に出来る可能性があります。放っておくと徐々に大きくなり、希に感染を起こして赤く腫れてしまう事があります。

治療は手術による切除、除去のみです。感染を起こして赤く腫れた状態で粉瘤について良く理解していない診療科に受診して、表面のみを切開して膿を出しただけでは病変が完全に除去されていないので再発の可能性があります。その場合、感染が落ち着いた所で病変を完全に切除する手術が必要になります。

さて、なぜ最初の話題が「粉瘤」かと言いますと、粉瘤の切除術は形成外科医にとって手術の基本となる手技だからです。

日常の外来診療における局所麻酔手術で最も多いのが粉瘤の切除とホクロの除去です。私の研修当時には毎年300〜500個の粉瘤を切除していました。

病変を取り残さない様に、最小限の切開で粉瘤の袋を除去するのですが、皮膚自体は紡錘形に切除して縫合する方法です。

この「紡錘形に切除して皮膚を縫合する」というのが最も基本的な手術手技であり、そして最も奥が深く、難しい手技になります。なぜならば形成外科医にとっては(そして美容外科医にとっても)、粉瘤を切除するだけで良いのではなく、目立たない綺麗な傷跡にするという使命が課せられているからです。

紡錘形皮膚切除デザイン
紡錘形皮膚切除デザイン
皮膚縫合後
皮膚縫合後
切除した粉瘤
切除した粉瘤

手術後の傷跡を「綺麗な傷跡」「目立たない傷跡」にするために手術中どのような工夫をしていると思いますか?

皮膚切開の方向、皮膚切開の形(デザイン)、メスによる皮膚の切り方、皮膚や皮下組織の扱い方、皮膚縫合の方法、皮膚縫合部への緊張の掛け方、縫合糸の種類などなど、様々なことについて配慮しながら一つの粉瘤についての切除術を行っています。

そしてわれわれ私自身はこれらを、粉瘤の出来ている部位、年齢、性別などで使い分けているのです。

実は「細かく縫えば奇麗に治る」というのは大きな間違いで(医師でも勘違いしている方が多いようです)、傷跡を綺麗にする最も重要な事は「皮膚の切り方」にあります。この事については後日、詳しくお伝えしたいと思います。

私自身は、この日常診療で最も多い粉瘤の切除、除去について「皮膚の紡錘形切除」を繰り返し行う事で、常に皮膚手術の基本手技を行い手術の腕が鈍らない様に維持しているのです。